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伊藤清永記念館(豊岡市立美術館)

(いとう きよなが きねんかん)

伊藤清永記念館は、兵庫県豊岡市出石町に位置する市立美術館で、豊岡市出身の洋画家・伊藤清永の作品を収蔵・展示しています。この美術館は、1989年に出石町立伊藤美術館として開館し、2014年に「豊岡市立美術館 伊藤清永記念館」として改称されました。

美術館の設立と目的

伊藤清永記念館は、出石町出身の著名な洋画家・伊藤清永の作品を保存し、その業績を顕彰することを目的に設立されました。伊藤清永は、1911年に生まれ、70年近くにわたる画業の中で、特に女性美の表現に焦点を当てた作品で知られています。彼の作品は、繊細な色線を重ねて描かれる独特の画風が特徴で、見る人々を魅了してきました。

常設展示と特別展

記念館の常設展では、伊藤清永の初期の代表作「磯人」や「I夫人像」、そして後期の代表作である裸婦像などが展示されています。また、黒田清輝から譲り受けたイーゼルや、藤田嗣治のパレットなど、貴重な記念品も鑑賞することができます。さらに、企画展として磁器の公募展「出石磁器トリエンナーレ」が開催されることもあり、多様なアート作品に触れる機会が提供されています。

伊藤清永画伯の生涯と作品

伊藤清永画伯は、1911年(明治44年)に豊岡市出石町に生まれ、昭和から平成にかけて活躍した洋画家です。文化勲章を受章した彼の作品は、豊麗優美な裸婦像で知られ、女性美の表現技法を追求し続けました。特に、彼の作品においては、細く繊細な色線を無数に重ねることで、独自の画風を確立し、光や体温まで感じられるような絵画を生み出しています。

渡欧と画風の変遷

1962年、清永は51歳でフランスとオランダに渡り、ヨーロッパの洋画制作を経験しました。この渡欧が彼の画風に大きな影響を与え、帰国後には柔らかで量感のある裸婦の表現を習得しました。しかし、日本の湿度が高い気候が油絵具の乾きを遅らせ、色彩が濁るという課題に直面し、一時はスランプに陥ります。試行錯誤の末、細く繊細な線を重ねる技法を確立し、再び彼ならではの発色の良い絵画を描くことに成功しました。

仏教絵画への取り組み

僧侶としての顔も持っていた清永は、仏教絵画にも挑戦しました。愛知学院大学の講堂にある大壁画「釈尊伝四部作」や、吉祥寺本堂の天井に描かれた「飛天」や「風神・雷神」など、彼ならではの独自の世界観を持つ作品が制作されています。これらの作品は、西洋の宗教画とも日本の伝統的な仏画とも異なる、斬新な表現が特徴です。

建物と施設概要

伊藤清永記念館は、鉄筋コンクリートを主要構造としながら、江戸時代から続く出石の街並みと調和する数奇屋風の外観を持っています。天井採光を得るためにガラス瓦を使用した展示室もあり、展示空間に光と開放感をもたらしています。館内には、展示室A、B、Cのほか、ギャラリー、ラウンジ、喫茶室などがあり、訪れる人々に快適な鑑賞環境を提供しています。

交通アクセス

伊藤清永記念館へのアクセスは、JR山陰本線の豊岡駅、江原駅、八鹿駅から全但バス「出石」行きに乗車し、終点で下車すると徒歩5分の距離です。出石城跡の近くに位置しており、観光スポットとしても便利な立地です。

まとめ

伊藤清永記念館は、豊岡市出石町の文化を象徴する美術館であり、洋画家・伊藤清永の作品を通じて、日本の近代美術の発展に貢献した彼の業績を学ぶことができます。常設展や特別展で展示される作品は、彼の長い画業の中で生み出された貴重なものであり、訪れる人々に深い感動を与えることでしょう。また、館内の施設やアクセスの良さも、快適な訪問をサポートしています。出石町を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。

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名称
伊藤清永記念館(豊岡市立美術館)
(いとう きよなが きねんかん)

城崎・出石・湯村温泉

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