城崎麦わら細工の歴史
始まりと発展
城崎麦わら細工の起源は約280年前、江戸時代にさかのぼります。城崎へ湯治に訪れた因州(現在の鳥取県)の職人・半七が、宿泊費の足しにするために竹笛やコマなどに色麦わらを貼り付け、宿の店先で販売したのが始まりとされています。この工芸品は、城崎温泉の歴史とともに受け継がれ、300年にわたる伝統を持つ工芸品として知られるようになりました。城崎麦わら細工は、現在も職人たちによって大切に継承され、その美しさと技術の高さが評価されています。
麦わら細工の魅力
城崎麦わら細工は、大麦のわらを用いて作られる繊細な工芸品で、絹のような滑らかな手触りと上質なツヤが特徴です。この麦わら細工は、桐箱や色紙、箸置き、ペンダントなど、さまざまな製品として制作され、兵庫県伝統的工芸品および豊岡市無形文化財に指定されています。城崎麦わら細工の魅力は、麦本来の持つ艶と輝き、そしてその技法の繊細さにあります。特に、細かい模様や幾何学模様を組み合わせたデザインは、職人の高度な技術によって生み出されます。
城崎麦わら細工伝承館での展示と体験
展示内容
城崎麦わら細工伝承館では、現代の職人たちによる作品約40点と、江戸から昭和初期にかけての作品約200点が展示されています。これらの作品は、城崎麦わら細工の歴史と技術を知るための貴重な資料であり、その繊細な工芸技術を間近で観覧することができます。また、館内は伝統的な土蔵をそのまま活用した空間となっており、レトロな雰囲気が漂い、訪れる人々に歴史の重みを感じさせます。
麦わら細工の体験
城崎麦わら細工伝承館では、伝統工芸である麦わら細工の制作体験も提供されています。訪れる人々は、職人の指導のもと、自分だけのオリジナル作品を作ることができます。体験は「かみや民藝店」で行われており、世界に一つだけの作品を制作することができるため、観光のお土産や思い出作りに最適です。
城崎麦わら細工の技術
製作工程
城崎麦わら細工の制作は非常に手間がかかる工程を経て行われます。まず、麦わらの調達から始まり、農家に依頼して作ってもらうほか、職人自らが畑で種を蒔いて育てることもあります。収穫された麦わらは、手作業で刈り取られ、硫黄で燻蒸し、その後乾燥させて準備が整います。次に、麦の節を切り、重曹を入れた湯で煮る「湯煮」の工程を経て、化学染料で染めていきます。こうして、ようやく麦わらが細工に適した状態になります。
模様張りと小筋張り
城崎麦わら細工の制作では、「模様張り」と「小筋張り」という技法が用いられます。模様張りは、花や鳥、人物画などを麦わらで表現する技法で、細かく切り取った麦わらを象嵌(ぞうがん)技法で張り付けます。一方、小筋張りは、麦わらを細い筋状にして幾何学模様を作り出す技法です。これらの技法を駆使して、職人たちは美しい工芸品を作り上げます。
城崎温泉と麦わら細工の魅力
関西屈指の温泉街である城崎温泉は、カニや温泉で有名な観光地ですが、その一方で、伝統工芸である城崎麦わら細工も大きな魅力の一つです。江戸時代後期にオランダから来日したドイツ人医師・シーボルトが持ち帰った資料の中にも、城崎麦わら細工が含まれており、「シーボルト・コレクション」として広く知られています。さらに、明治35年には、セントルイス万国博覧会で最高名誉賞牌を受賞し、その技術の高さが世界に認められました。
交通アクセス
城崎麦わら細工伝承館は、JR山陰本線の城崎温泉駅から徒歩10分の場所にあります。城崎温泉を訪れる際には、ぜひ立ち寄っていただきたいスポットです。伝統工芸の美しさと、その歴史に触れることができる城崎麦わら細工伝承館で、豊かな時間をお過ごしください。