概要
日和山海岸は、円山川河口から竹野海岸東まで続くリアス式海岸です。入り組んだ海岸線には、波による侵食が作り出した奇岩が連続しており、自然の力を感じさせる景観が広がっています。特に、円山川河口近くに位置する「日和山遊園」と呼ばれるエリアには、観光名所の一つである城崎マリンワールドや、温泉宿泊施設の日和山温泉のホテル金波楼などがあり、多くの観光客が訪れます。また、海岸の沖合に浮かぶ小島には、龍宮城を模した建物が設置され、訪れる人々を魅了しています。
日和山海岸の絶景と龍宮城
後ヶ島と浦島伝説
後ヶ島は、日本の昔話「浦島太郎」にまつわる伝説が残る島として知られています。地元の言い伝えでは、浦島太郎が玉手箱を開けた場所とされています。
青く広がる日本海と澄んだ空の中、静かにたたずむ後ヶ島。その幻想的な光景は、まるで時間が止まったかのような静寂を感じさせます。浦島太郎が体験したように、ここでは日常を忘れ、時の流れに思いを馳せることができます。
龍宮城の誕生
後ヶ島には、1950年(昭和25年)に、島の伝承を後世に伝えるために東屋(あずまや)が建てられました。その姿がまるで竜宮城のように見えることから、「龍宮城」と呼ばれるようになりました。
当時は、この東屋で茶話会が開かれることもあり、多くの人々が訪れていたといいます。かつては後ヶ島へ渡ることも可能でしたが、現在は立ち入りが禁止されており、沿岸部からの鑑賞のみとなっています。
龍宮城を楽しむスポット
龍宮城は、日和山海岸沿岸部や城崎マリンワールドの施設内から鑑賞できます。
特に、日の出や夕日の時間帯には、海と空の光景が美しく変化し、龍宮城のシルエットが際立ちます。また、雲海、幻想的な景色が広がることもあり
晩秋の早朝に発生する雲海「けあらし」に包まれることもあり、幻想的な風景を楽しむことができます。この現象は、冷え込んだ空気が温かい海面と接触することで生じる霧が海面を覆うものです。
日本三大川あらしと日和山海岸
川あらしとは?
「川あらし」とは、冷たい風が霧を伴いながら川沿いを下る自然現象のことを指します。この現象が確認できる一級河川は全国で3カ所のみで、それらは「日本三大川あらし」と呼ばれています。
日本三大川あらし
- 愛媛県大洲市の「肱川(ひじかわ)」
- 鹿児島県薩摩川内市の「川内川(せんだいがわ)」
- 兵庫県豊岡市の「円山川(まるやまがわ)」
日和山海岸での川あらし
日和山海岸は、円山川の河口に位置しているため、ここでは幻想的な川あらしの景色を望むことができます。特に、龍宮城が雲海に浮かぶ光景は絶景です。
川霧(雲海)が発生しやすい条件
川霧や雲海は、以下の条件が揃うと発生しやすくなります。
- 晴れた日の早朝
- 前日との気温差が大きい
- 湿度が高く、放射冷却がある
特に10月から翌年3月にかけては、運が良ければ龍宮城が雲海に浮かぶ神秘的な風景を楽しむことができるかもしれません。
日本最古の浦島伝説
浦島伝説のゆかりの地
日和山海岸の沖に広がる日本海の向こう、丹後半島にも浦島伝説のゆかりの地が点在しています。その代表的な場所の一つが、京都府伊根町にある浦嶋神社です。
浦嶋神社に伝わる浦島伝説
この神社には、浦島太郎のモデルとされる「浦嶋子(うらしまこ)」を祀る社があり、そこに伝わる物語は次のようなものです。
浦嶋子は、3日間にわたり釣りをしていました。そのとき、五色の亀を釣り上げます。この亀は美しい乙女へと姿を変え、浦嶋子を常世の国へと誘いました。そこで浦嶋子は楽しい日々を過ごしますが、故郷への思いが募り、帰ることを決意します。
常世の国を去る際、乙女から「決して開けてはならない」と言われた玉手箱を渡されます。しかし、浦嶋子はそれを開けてしまい、立ち上る煙とともに白髪の老人となってしまいました。
最も古い浦島伝説
日本各地に浦島伝説は残されていますが、浦嶋神社の伝承は最も古いものと考えられています。これは、『丹後国風土記』や『日本書紀』にも記述が見られることが理由とされています。
アクセス情報
日和山海岸へのアクセスは、JR山陰本線の城崎温泉駅から全但バスを利用し、約10分の「日和山」行きの終点で下車します。バス停からは徒歩ですぐに海岸にたどり着くことができます。
周辺の観光地
日和山海岸周辺には、観光スポットが多数存在します。
城崎温泉
城崎温泉は、歴史と風情を感じさせる温泉地で、日和山海岸からのアクセスも便利です。温泉街を散策しながら、外湯巡りを楽しむことができます。
竹野浜
竹野浜は、日和山海岸からほど近い場所に位置し、美しい砂浜が広がるビーチです。夏季には多くの海水浴客で賑わい、家族連れにも人気のスポットです。
津居山海岸 - 気比の浜
津居山海岸にある気比の浜も、近隣の見所の一つです。広大な砂浜が特徴で、海水浴や散歩に最適な場所です。
周辺の自然景観
宇日流紋岩の流理
日和山海岸から少し離れた場所には、宇日流紋岩の流理(ういりゅうもんがんのりゅうり)があります。これは兵庫県豊岡市北部の竹野海岸沿いに連続する流紋岩で、約300万年前から200万年前の新第三紀鮮新世に形成された岩石層です。一帯は山陰海岸国立公園に属し、自然の驚異を体感できる場所として知られています。特に、宇日流紋岩の大断崖や奇岩、球顆状流紋岩などが見どころです。
所在地とアクセス
日和山海岸
所在地: 〒669-6122 兵庫県豊岡市瀬戸1090
アクセス: JR山陰本線城崎温泉駅から全但バスで10分、「日和山」行き終点下車、徒歩すぐ
宇日流紋岩の流理
所在地: 兵庫県豊岡市竹野町田久日字向山
アクセス: JR山陰本線城崎温泉駅から全但バス、またはJR山陰本線豊岡駅・竹野駅から全但バスまたは豊岡市営バスを利用し、竹野海岸線まで
まとめ
日和山海岸には、美しい海岸線とともに、浦島伝説を感じることができるスポット「龍宮城」があります。朝日や夕日に照らされる光景、雲海に浮かぶ幻想的な姿は、訪れる人々に特別なひとときを与えてくれます。
また、日本三大川あらしのひとつ「円山川の川あらし」を見ることができるのも、この場所ならではの魅力です。さらに、浦島伝説のルーツをたどる旅として、丹後半島の浦嶋神社を訪れるのもおすすめです。
歴史と自然が織りなす日和山海岸で、ぜひ、浦島太郎の世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。