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灘の酒

(なだ さけ)

六甲の清らかな水が育む銘酒

阪神間の海岸線に沿って点在する、今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷の5つの酒造地は「灘五郷(なだごごう)」と呼ばれ、江戸時代から続く歴史ある酒蔵が多く、日本有数の酒どころとして知られています。現在も日本酒の生産量では国内最大級を誇ります。

灘の酒の魅力は、六甲山の清らかな水と独自の醸造技術にあります。香り高く、まろやかな舌触りの日本酒は、多くの人々を魅了してやみません。

灘五郷 〜日本を代表する酒造地〜

灘五郷の構成

これらの地域では、江戸時代から続く伝統的な酒造りが受け継がれています。全国的にも有名な銘柄が多く、各酒蔵が独自の技術と工夫を凝らした酒を生産しています。

灘の酒造りの特徴

宮水(みやみず) 〜酒造りに適した名水〜

灘の酒が高品質である理由の一つに、「宮水」と呼ばれる特別な水の存在があります。宮水は、西宮市の限られた地域でのみ採取される地下水で、ミネラルが豊富に含まれています。この水を使用することで、発酵が進みやすく、力強い味わいの日本酒が生まれます。

寒造り 〜六甲颪が生み出す理想の環境〜

灘の酒造りは、冬の寒さを利用した「寒造り(かんづくり)」が基本です。六甲山から吹き下ろす「六甲颪(ろっこうおろし)」と呼ばれる冷たい風が酒蔵を包み込み、低温発酵に適した環境を作り出します。これにより、キレのある辛口の日本酒が生まれるのです。

発酵方法と味の特徴

灘の酒は、硬水である宮水を使用しているため、発酵が強く進みやすい特徴があります。そのため、もろみの日数が比較的短く、新酒の段階では辛口で荒々しい「男酒(おとこざけ)」と呼ばれる力強い味わいになります。しかし、この新酒も夏を越すことで熟成が進み、まろやかで調和のとれた味へと変化します。このように、秋を迎えて酒の質が向上する現象を「秋晴れ」「秋上がり」と言い、灘の酒の大きな特徴の一つとなっています。

灘五郷の酒蔵と代表銘柄

灘五郷には多くの歴史ある酒蔵があり、それぞれ個性豊かな日本酒を造っています。以下では、各郷にある主要な酒蔵とその代表銘柄を紹介します。

今津郷(いまづごう)

大関(おおぜき)

代表銘柄: 大関 1711年に長部文治郎によって創業されました。1810年には今津灯台を設置し、現在も管理を続けています。1884年に「萬両」から「大関」へと銘柄を変更しました。「大関」は、大相撲の最高位であることと、豊作を意味する「大出来」に通じることから名付けられました。

今津酒造(いまづしゅぞう)

代表銘柄: 扇正宗 1751年創業。1910年に「扇正宗」を商標登録しました。

西宮郷(にしのみやごう)

辰馬本家酒造(たつうまほんけしゅぞう)

代表銘柄: 白鹿 1662年に辰屋吉左衛門が創業。近代の辰馬財閥の中核を成し、現在も白鹿グループを率いています。

白鷹(はくたか)

代表銘柄: 白鷹 1862年、辰馬本家から分家した辰馬悦蔵によって創業されました。

魚崎郷(うおざきごう)

櫻正宗(さくらまさむね)

代表銘柄: 櫻正宗 1625年、山邑太左衛門によって池田荒牧(現在の伊丹市)で創業。宮水の発見者とされ、日本酒「正宗」の元祖ともいわれています。また、協会1号酵母の発祥蔵でもあります。

菊正宗(きくまさむね)

代表銘柄: 菊正宗 1659年創業。兵庫県産の酒米「山田錦」と宮水を用い、伝統的な「生酛(きもと)造り」の手法を守り続けています。

御影郷(みかげごう)

剣菱(けんびし)

代表銘柄: 剣菱 室町時代から続く歴史ある酒蔵。江戸時代には将軍家や大名にも愛された逸品で、長期熟成による深い味わいが特徴です。

西郷(にしごう)

沢の鶴(さわのつる)

代表銘柄: 沢の鶴 1717年創業。精米歩合をあまり下げずに米本来の旨味を引き出した日本酒造りを得意としています。

文化財・文化遺産

旧辰馬喜十郎住宅

辰馬家は、江戸時代から続く酒造家であり、白鹿(はくしか)ブランドを展開する辰馬本家酒造の創業家でもあります。その旧邸である「旧辰馬喜十郎住宅」は、兵庫県指定文化財となっており、当時の酒造家の暮らしを垣間見ることができます。

灘の酒造用具

「菊正宗酒造記念館」に収蔵されている酒造用具は、国の有形民俗文化財に指定されており、伝統的な酒造りの技術を今に伝えています。

甲南漬資料館(旧高嶋家住宅主屋)

国の登録有形文化財である「甲南漬資料館」では、酒粕を使った伝統的な漬物「甲南漬」の製造工程を学ぶことができます。

近代化産業遺産としての灘五郷

環境省の「かおり風景100選」に選ばれた「灘五郷の酒づくり」。また、文化庁の「日本遺産」にも認定されており、長い歴史の中で確立された酒造技術とその文化的価値が高く評価されています。

灘五郷の日本酒醸造関連遺産

灘の酒を楽しむ

灘の酒をより深く楽しむために、酒蔵見学や日本酒の試飲を体験できる施設が数多くあります。特に「灘五郷酒造組合」加盟の酒蔵では、伝統的な酒造りの工程を間近で見学できるほか、出来立ての日本酒を味わうことも可能で、日本酒好きにはたまらない体験となるでしょう。

日本酒をテーマとする施設・博物館

みりんをテーマにした施設

イベント

灘の酒蔵探訪

毎年10月から11月にかけて開催される「灘の酒蔵探訪」は、灘五郷酒造協会、観光協会、酒造・酒販会社、輸送会社などが協力して行う観光イベントです。スタンプラリーや、週末に運行される「酒蔵めぐりバス」など、さまざまな企画が用意されています。

当初は神戸市内の三郷で開催されていましたが、2018年からは西宮郷・今津郷も加わり、灘五郷全域を巻き込む大規模なイベントへと発展しました。

お土産

灘の酒を楽しんだ後は、ぜひお土産もチェックしましょう。伝統の味を自宅でも楽しめる逸品が揃っています。

灘の酒の歴史 〜日本酒文化の中心地〜

灘は、江戸時代以降、日本を代表する酒造地として発展しました。もともと灘地域は「灘目(なだめ)」と呼ばれ、六甲山と大阪湾に挟まれた平野部でした。この地域には良質な水が湧き、酒造りに適した土地として古くから注目されていました。

江戸時代の発展

江戸時代には、灘の酒が江戸へと運ばれ、「下り酒(くだりざけ)」として大変な人気を博しました。特に、船での輸送が便利だったこともあり、大量生産と遠隔地への流通が可能となり、灘の酒は全国的に広まっていきました。

明治以降の近代化

明治時代以降、酒造りの技術革新が進み、灘五郷の枠組みも現在の形に整いました。近代的な設備が導入されるとともに、伝統技術も守られ、品質の向上が図られました。

まとめ

灘の酒は、六甲山系の宮水と伝統的な技術によって生み出される、力強くも繊細な味わいを持つ日本酒です。各地に点在する酒蔵を巡りながら、日本酒の魅力を存分に堪能してみてはいかがでしょうか。特に、酒蔵見学では普段味わえない限定酒を試すことができるので、日本酒好きにはたまらない体験となるでしょう。

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