概要
現在の菊正宗酒造記念館は、1995年の阪神・淡路大震災後に再建されたものです。旧記念館は、御影にあった本嘉納家の屋敷に1659年(万治2年)に建てられた酒蔵を、1960年(昭和35年)に現在地に移築し開館しました。記念館は国の重要有形民俗文化財に指定された「灘の酒造用具」を含む所蔵品を展示し、年間約4万人が訪れる企業博物館として親しまれていましたが、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により建物が全壊しました。
震災後の再建
震災により建物は全壊しましたが、所蔵品は手作業で回収され、その多くが無事または修復可能な状態で発見されました。その後、地上2階建で耐火・耐震構造を持つ新しい館が建設され、1999年1月25日に再開館しました。この新しい記念館は、伝統的な酒蔵の建築様式を模倣し、屋根は本瓦葺、外壁や辻塀は焼杉板張りという仕様になっています。また、倒壊した旧館の柱や梁などの部材の一部が新館に継承されています。
展示内容
記念館内では、国指定の重要有形民俗文化財「灘の酒造用具」が展示されており、日本酒の製造工程や伝統技術を詳しく知ることができます。
お酒の楽しみ方やマナーについての映像ライブラリーも設置されています。さらに、利き酒や酒類の販売も行われており、訪れる人々に日本酒の魅力を伝えています。
見どころ
- 生酛造りの工程展示 - 菊正宗がこだわる伝統製法を実際に見ることができます。
- 試飲コーナー - さまざまな種類の菊正宗の日本酒を味わえます。
- 限定商品販売 - 記念館限定の日本酒や関連グッズを購入できます。
コロプラとの提携
菊正宗酒造記念館は、携帯電話による位置情報ゲーム『コロプラ』の提携施設でもあり、ゲーム内で利用できる「コロカ」が配布されるスポットの一つです。これにより、若い世代にも記念館を訪れる機会が提供されています。
菊正宗酒造株式会社 ー 伝統と革新の日本酒文化
菊正宗酒造株式会社(きくまさむねしゅぞう)は、兵庫県神戸市東灘区に本社を構える、日本を代表する酒造会社の一つです。灘五郷の一つ、御影郷に本拠を構え、「キクマサ」の愛称で広く知られています。伝統的な製法である生酛(きもと)造りにこだわり、辛口の日本酒として人気を誇ります。
菊正宗の歴史と概要
菊正宗酒造の創業は万治2年(1659年)。350年以上にわたる歴史を持ち、清酒業界をリードし続けてきました。その名門である嘉納家は、江戸時代から日本酒の品質向上に尽力し、灘の酒を全国に広める役割を果たしました。
また、嘉納家の一門からは、白鶴酒造の嘉納家(白嘉納家)、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎の嘉納家(浜東嘉納家)、神戸ジムを創設した嘉納健治(浜嘉納家)など、様々な分野で功績を残した人物を輩出しています。
こだわりの生酛造り
菊正宗の最大の特徴は「生酛造り」にこだわり続けていることです。生酛造りとは、酵母を自然の力で培養する伝統的な製法であり、発酵に時間がかかるものの、コクのあるしっかりとした味わいの酒が生まれます。
特に関東地方で人気が高く、すっきりとした辛口の味わいは、料理とよく合う日本酒として愛されています。また、樽酒の分野ではトップシェアを誇り、多くの人々に親しまれています。
菊正宗の商標「正宗」の由来
「正宗」という名前は、同じ灘五郷の「櫻正宗」の六代目が、仏教の経典から命名したのが始まりとされています。その後、「菊正宗」が江戸で大流行したことをきっかけに、多くの酒蔵が「正宗」と名乗るようになりました。そのため、差別化のために「菊」を冠し、「菊正宗」という商標が誕生したと言われています。
菊正宗の歩み
長い歴史の中で、菊正宗は常に革新を続け、清酒業界を牽引してきました。以下に、その主要な沿革を紹介します。
江戸時代から明治時代
- 1659年 - 嘉納家が神戸・御影にて酒造を開始。
- 1814年 - 1万1000石(1980kl)の清酒を醸造。
- 1877年 - 清酒をイギリスへ輸出。
近代化と発展
- 1908年 - 合名會社本嘉納商店に組織変更(1919年に株式会社化)。
- 1927年 - 灘中学校の設立に関わる(白鶴・櫻正宗と共に)。
- 1947年 - 昭和天皇が本社に行幸。
戦後の成長とブランド確立
- 1965年 - 「菊正宗酒造株式会社」に社名変更。
- 1971年 - 「灘の酒造用具」505点が国の重要有形民俗文化財に指定。
- 1981年 - 業界に先駆けて三増酒を全廃。
現代の革新
- 2009年 - 創業350周年を記念して「真・辛口宣言」発表。生酛造りを全面的に採用。
- 2012年 - 吟醸酒・純米吟醸酒をすべて生酛化。
- 2016年 - 高級ブランド「百黙」発表。
菊正宗と文化・メディア
CMソング「やっぱり俺は菊正宗」
「やっぱり俺は菊正宗」というフレーズで知られるCMソングは、作詞・永六輔、作曲・中村八大、歌・西田佐知子による『初めての街で』です。1960年代からラジオCMで流れていましたが、2008年にテレビCMとして復活し、現在も多くの人に親しまれています。
交通アクセス
- 六甲ライナー「南魚崎駅」から徒歩4分
- 阪神電車「魚崎駅」から徒歩7分
周辺情報
菊正宗酒造記念館の周辺には、灘五郷と呼ばれる日本酒の名産地があります。この地域には、他にも多くの酒蔵や記念館が点在しており、酒好きにはたまらないスポットとなっています。また、近隣には観光名所も多く、観光と合わせて訪れることができます。
まとめ
菊正宗酒造記念館は、伝統的な酒造りの技術と歴史を学ぶことができる貴重な場所です。震災を乗り越え、新たに再建されたこの記念館は、日本酒の文化を後世に伝える重要な役割を担っています。神戸を訪れる際には、ぜひ一度足を運んでみてください。