遺跡の発見と歴史
発見の経緯
大中遺跡は、1962年6月24日、播磨町立播磨中学校の3名の生徒によって発見されました。彼らは、地元のお年寄りから、大正時代に大中遺跡付近で別府鉄道土山線が敷かれた際に、多数のタコツボが掘り出された話を聞き、その遺跡北側に位置する山之上住吉神社南側の土砂採掘跡で大量の土器片を発見しました。発見された遺物は、約700メートル南西にある善福寺で保管され、その後、遺跡発見届が町・県教育委員会に提出されたことにより、県の専門家による調査が開始されました。
発掘調査の経過
発掘調査は、1962年12月から2003年11月まで、20回にわたって行われました。調査は、播磨町教育委員会および兵庫県教育委員会が主体となって実施され、遺跡の内容や範囲、環境整備、施設整備に伴う発掘が行われました。特に、第18次から第20次の調査では、県立考古博物館に伴う史跡内容確認が重要な目的となっていました。
遺跡の地理と地形
播磨町の位置と地理的背景
播磨町は、兵庫県で最も小さい面積を持つ町であり、そのうち3割は海を埋め立てた人工島です。JR土山駅と山陽電鉄播磨町駅の2駅があり、神戸から40キロメートル、姫路から25キロメートルの位置にあります。大中遺跡は、播磨町大中1丁目付近に位置し、北に国道2号、南に国道250号が走っています。遺跡は瀬戸内式気候に属し、年間を通じて温暖で少雨な気候です。
遺跡の地形と環境
大中遺跡は、約70,000平方メートルの広さを持ち、立地は洪積台地の先端部に位置しています。遺跡の周辺には潰目池、狐狸ケ池、喜瀬川などがあり、加古川氾濫域の東端にあたります。標高は約14.5メートルで、六甲山の隆起に伴う西側地域の沈降によって、東部から西部にかけて緩やかに傾斜しています。
復元建物と出土品
復元された竪穴建物
大中遺跡には、円形や方形、六角形など様々な形の竪穴建物跡が多く残されています。これらの建物は、弥生時代の生活を伝える重要な遺構であり、その一部が復元され、公開されています。復元された竪穴建物の材料には、備前岡山から調達したヨシが使用され、京都美山の職人たちにより復元されました。
出土品の紹介
大中遺跡からは、多くの弥生時代の生活道具が出土しており、播磨町郷土資料館に展示されています。主な出土品には、弥生土器(皿、高坏、壺)、土師器、石鏃、内行花文鏡片、網のおもり、土製模造鏡などが含まれます。これらの出土品は、当時の生活様式や文化を知る上で非常に貴重な資料となっています。
大中遺跡の年表と祭り
年表
大中遺跡は、1962年の発見以来、さまざまな歴史的な出来事を経てきました。以下は、主な年表です。
- 1962年(昭和37年)6月24日 - 大中遺跡発見(第1次発掘調査)
- 1967年(昭和42年)6月22日 - 国史跡に指定
- 1974年(昭和49年)9月28日 - 県立史跡公園「播磨大中古代の村」開園
- 1985年(昭和60年)11月 - 郷土資料館が開館
- 1990年(平成2年)8月3日 - 「大中遺跡まつり」始まる
- 2007年(平成19年)10月13日 - 県立考古博物館開館
- 2012年(平成24年) - 大中遺跡発見50周年
大中遺跡まつり
毎年秋には、「大中遺跡まつり」が開催され、弥生時代の文化を体験できる様々な催しが行われます。この祭りは、地元住民や観光客に人気があり、歴史と文化を楽しむ絶好の機会となっています。
施設と交通アクセス
隣接する施設
大中遺跡(県立史跡公園「播磨大中古代の村」)には、播磨町郷土資料館や兵庫県立考古博物館が隣接しています。これらの施設は、弥生時代から古墳時代の歴史や文化を学ぶ場として、多くの訪問者に利用されています。また、周辺には有料駐車場が完備されており、観光客にとって利便性が高いです。
交通アクセス
大中遺跡へのアクセスは、JR神戸線(山陽本線)の土山駅から徒歩約12分、山陽電車の播磨町駅から徒歩約25分と、公共交通機関を利用するのが便利です。車でのアクセスも良好で、明石西ICから約3キロメートルの距離にあります。
播磨大中古代の村 ― 大中遺跡を体感できる史跡公園
大中遺跡は、県立史跡公園「播磨大中古代の村」として整備されており、隣接する施設とともに歴史を学ぶことができます。
播磨町郷土資料館
郷土の歴史を紹介する資料館で、大中遺跡の出土品をはじめ、播磨町の偉人や鉄道史に関する展示が行われています。
主な展示内容
- 大中遺跡出土品
- 新聞の父「ジョセフ・ヒコ」に関する資料
- 新井開削の父「今里傳兵衛」の業績
- 廃線となった別府鉄道の歴史
- 屋外展示:別府鉄道の機関車と客車(乗車体験可能)
兵庫県立考古博物館
2007年10月13日に開館した兵庫県立考古博物館は、兵庫県内の豊富な遺跡数を背景に、考古学の研究・展示・体験学習を行う施設です。館内には、発掘調査を担当する「埋蔵文化財調査部」が設置されており、研究成果の展示や考古学に関する人材育成も行っています。
博物館の特徴
- 国の史跡「大中遺跡」の隣に立地
- 参加体験型博物館として、常時体験学習を実施
- 発掘調査の現場や金属器の保存処理作業を見学可能
- エントランスロビーには「神戸凮月堂」のカフェを併設
館内構造
- 屋上庭園および館内からガラス越しに大中遺跡を一望
- 高さを抑え、壁面および屋上の緑化を施した環境調和型デザイン
主な展示
- 実物大の古代船
- 大王の石棺(見瀬丸山古墳前棺の復元)
- 明石人骨
- 雲部車塚古墳の竪穴式石槨の復元
- 県内出土の人骨実物(縄文~古墳時代)
県指定重要有形文化財
兵庫県内の遺跡から出土した貴重な考古資料が多数収蔵されています。
主な所蔵品
- 市之郷遺跡(姫路市)出土品(44点)
- 市辺遺跡(丹波市)出土品(285点)
- 七日市遺跡(丹波市)出土品(1,307点)
- 表山遺跡(神戸市西区)出土小形仿製鏡 他(8点)
- 平方遺跡(三田市)小銅鐸鋳型及び関係品(33点)
施設紹介
展示部門
主な展示スペース
- エントランス展示「ときのギャラリー」(発掘された土器を時系列に展示)
- ガイダンス展示室
- 体験展示室「発掘ひろば」
- テーマ展示室
- 特別展示室
- バックヤード見学デッキ
体験学習支援ネットワーク部門
- 体験学習室(3室)
- 講堂
- ボランティアルーム
- 考古学情報プラザ
- ネットワーク広場
- 多目的ホール(180席)
収集保存部門
- 特別収蔵庫
- 一時保管庫
遺跡調査部門
- 埋蔵文化財調査部
遺物整理部門
- 遺物整理室
- 写真整理室
- 資料整理室
- 金属器保存処理室
- 含浸作業室
- 少量危険物保管庫
収蔵保管部門
- 収蔵庫
- 図面・写真保管室
まとめ
大中遺跡とその周辺施設は、弥生時代から古墳時代への歴史を学ぶ貴重なスポットです。考古学に興味がある方はもちろん、親子で楽しめる体験学習も充実しており、多くの人々に親しまれています。歴史と触れ合う旅として、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。