本尊とご詠歌
札所本尊真言:おん ばざら たらま きりく そわか
ご詠歌:あはれみや普(あまね)き門(かど)の品々(しなじな)に なにをかなみのここに清水
清水寺の歴史
創建と伝承
清水寺の歴史は古く、寺伝によれば約1,800年前(古墳時代)に天竺(古代インド)から来日した僧、法道によって創建されたとされています。推古天皇35年(627年)には、推古天皇自らの命により根本中堂が建立され、さらに神亀2年(725年)には聖武天皇が行基に命じて大講堂を建立したと伝えられています。
しかし、日本に仏教が伝来したのは6世紀のことであり、「1,800年前に法道が創建」との伝承は後世の創作であると考えられます。法道は伝説上の人物であり、天竺から紫の雲に乗って日本へ渡来したという逸話がありますが、兵庫県南部に集中する法道開基を伝える寺院が存在することから、この地に仏教者がいた可能性は高いと考えられます。
近代の再建
1913年(大正2年)、根本中堂や大講堂などが焼失しましたが、1917年(大正6年)に再興されました。現在の清水寺は、その再建後の姿を保ちつつ、多くの参拝者を迎え入れています。
清水寺は、清水・東条湖県立自然公園内に位置し、法道仙人の開基による西国第二十五番札所として、海抜500メートルの山上に位置しています。ここからは六甲の山並み、瀬戸内海、淡路島、明石海峡大橋、家島、四国までを見渡すことができ、四季折々の自然を楽しむことができます。また、令和2年4月12日からはスポーツサイクルでの参拝も解禁され、ヒルクライム登山を楽しむ人々も訪れています。
清水寺の境内
境内の全体構成
清水寺の境内は、標高552メートルの御嶽山の頂上付近に広がっており、駐車場のすぐ上にある仁王門をくぐると、広がる境内が参拝者を迎え入れます。仁王門から約300メートルの平坦な石垣の道を進むと薬師堂があり、その先に大講堂が見えます。さらにその右側の石段を上がると地蔵堂と鐘楼があり、最終的に根本中堂にたどり着きます。
主要な建築物と見どころ
根本中堂(国登録有形文化財)
根本中堂(国登録有形文化財):清水寺の本堂であり、寺の中心的な建物です。1913年(大正2年)に焼失しましたが、1917年(大正6年)7月に再建されました。本尊の十一面観音立像と両脇仏の毘沙門天立像・吉祥天立像は、30年に一度の開帳が行われる秘仏であり、加東市指定有形文化財に指定されています。
薬師堂
薬師堂:昭和59年(1984年)に再建された薬師堂は、元々平清盛の義母である池禅尼が創建したと伝えられています。この堂には、東京芸大の藪内佐斗司教授による「十二神将」が安置されています。
大講堂(札所堂、国登録有形文化財)
大講堂(国登録有形文化財):大講堂は清水寺の札所堂であり、西国二十五番札所として多くの参拝者が訪れます。神亀2年(725年)に創建されましたが、1913年(大正2年)に焼失し、1917年(大正6年)7月に再建されました。堂内には千手観音坐像(大正時代作)が安置されており、拝観が可能です。
鐘楼(国登録有形文化財)
鐘楼(国登録有形文化財):鐘楼は1913年(大正2年)に焼失し、1920年(大正9年)に再建されました。開運の鐘と呼ばれるこの鐘楼は、参拝者が訪れるたびにその音を響かせています。
地蔵堂
地蔵堂:昭和57年(1982年)に再建された地蔵堂は、境内の一部として重要な役割を果たしています。設計は神戸大学元副学長の多淵教授が担当し、御本尊は東京芸大の菅原安男名誉教授による作品です。
おかげの井戸
おかげの井戸:この井戸は、開山法道仙人が水神に祈り、湧水したとされる霊泉「滾浄水」です。清水寺の名の由来ともなったこの霊泉は、根本中堂の左裏に位置しています。
多宝塔(大塔)跡
多宝塔(大塔)跡:現在は基壇のみが残るこの多宝塔跡は、1907年(明治40年)に焼失し、その後再建されましたが、1973年(昭和48年)に落雷で崩壊しました。再建予定の多宝塔は、平清盛の武運長久を祈願して祇園御女によって建立されたと言われています。
月見亭
月見亭:この場所は、当山大法会二十六夜月待の最適所とされています。四季折々の美しい風景を楽しむことができ、参拝者に人気のスポットです。
仁王門
仁王門:仁王門は昭和40年(1965年)に台風で全壊しましたが、昭和55年(1980年)に再建されました。設計は神戸大学元副学長の多淵教授が担当し、金剛力士像は大正10年(1921年)に奈良の仏師菅原大三郎氏が制作したものです。
赤松氏範の墓と切腹石
赤松氏範の墓と切腹石:清水寺の境内には、戦国時代の武将である赤松氏範の墓と切腹石が残されています。これらは、歴史的な遺構として訪れる人々にその時代の雰囲気を伝えています。
清水寺の文化財
重要文化財
清水寺には、多くの重要文化財が指定されており、その中でも以下のものが特に注目されています。
大刀 三口 附:拵金具十箇:1981年(昭和56年)6月9日に重要文化財に指定されたこの大刀は、清水寺の歴史的価値を象徴する貴重な遺産です。
大字法華経 巻第五:1995年(平成7年)6月15日に重要文化財に指定されたこの法華経は、清水寺の宗教的価値を物語る重要な文書です。
国登録有形文化財
清水寺の建造物の多くは国登録有形文化財に指定されています。
- 根本中堂:清水寺の本堂で、1999年(平成11年)6月7日に指定されました。
- 大講堂:大講堂も1999年(平成11年)6月7日に指定されました。
- 鐘楼:鐘楼は1999年(平成11年)6月7日に指定されました。
- 本坊:清水寺の寺務所を含む本坊も1999年(平成11年)6月7日に指定されました。
- 客殿:本坊に隣接する客殿も1999年(平成11年)6月7日に指定されています。
兵庫県指定有形文化財
清水寺には以下の兵庫県指定有形文化財があります。
- 銅造菩薩立像:像高18cmで、1989年(平成元年)3月31日に指定されました。
- 播磨清水寺文書:41巻608通に及ぶ文書で、1976年(昭和51年)3月23日に指定されました。
加東市指定有形文化財
加東市によって指定された有形文化財も数多く存在します。
- 木造十一面観音菩薩立像:檜の一木造で像高139.3cm、平安時代中頃に作られたもので、1987年(昭和62年)3月31日に指定されました。
- 木造毘沙門天立像:カヤの一木造で像高69.2cm、平安時代中頃に作られたもので、1987年(昭和62年)3月31日に指定されました。
- 木造吉祥天立像:檜の寄木造で像高62.2cm、室町時代末期に作られたもので、1987年(昭和62年)3月31日に指定されました。
- 天部立像:像高146.5cmで、2016年(平成28年)3月30日に指定されました。
- 紺紙金字妙法蓮華経・経箱:2008年(平成20年)3月31日に指定されました。
- 清水寺瑞柳院旧記:全48丁の小冊子で、1995年(平成7年)4月25日に指定されました。
- 制札及び制札箱:2004年(平成16年)12月22日に指定されました。
- 銅椀:2008年(平成20年)3月31日に指定されました。
加東市指定天然記念物
加東市によって指定された天然記念物として、1983年(昭和58年)10月28日に指定された「クリンソウ」があります。この花は、清水寺の自然美を象徴する存在です。
清水寺の年中行事
清水寺では、年間を通じて多くの行事が行われています。以下にその一部をご紹介します。
- 修正会:1月元旦に行われる法要です。
- 無縁経法要:4月第3日曜日に行われる法要です。
- 花まつり(仏生会):5月8日(月おくれ)及び5月5日 - 8日の間の最後の休日に行われます。
- 精霊会:8月13日 - 15日に行われる法要です。
- 地蔵盆:8月24日に行われます。
- 二十六夜待法要:8月26日に行われる法要です。
- 朝粥会:4月から12月の毎第3日曜日、午前6時より読経と座禅が行われます。
- 月例護摩供:毎月第3日曜日、午前8時30分より護摩供が行われます。
清水寺へのアクセス
清水寺は、旧摂津国・播磨国・丹波国の3つの国境に位置する御嶽山(標高552m)の山頂付近にあります。かつては2kmの参道を登るしかありませんでしたが、1975年(昭和50年)に登山道路が開通しました。
公共交通機関でのアクセス
JR宝塚線の相野駅から神姫バス清水寺行きに乗り、終点「清水寺」で下車します。旧今田町の中心部を経由する便と経由しない便があり、所要時間で10分前後の違いがあります。タクシーを利用する場合は、相野駅から清水寺まで約17分で到着します。
なお、バスは1日2往復のみであるため、発車時刻に注意が必要です。2便とも清水寺で約1時間停車し、その後相野駅に向けて折り返します。この停車時間を利用して参拝するのが一般的です。終点の「清水寺」で下車する際は、入山料の500円が別途必要で、バスの運転士が徴収します。バスの運賃はICカードでの支払いが可能ですが、入山料の支払いは現金のみです。