イカナゴとは?
イカナゴ(玉筋魚、鮊子、䱊)は、イカナゴ科に属する海水魚の総称です。群れを作って水面を泳ぐことから「玉筋魚(いかなご)」と呼ばれています。地域によって異なる名前で呼ばれることがあり、小さいものを「小女子(こうなご)」、大きいものを「大女子(おおなご)」とする地方もあります。
イカナゴは体長20cmほどまで成長し、水温が15度を超えると砂の中に潜って「夏眠」する特徴があります。漁期は2月後半から4月末頃までで、特に2~6cmのものが食べ頃とされています。兵庫県では、春を告げる魚としても知られています。
イカナゴの旬
イカナゴの旬は以下の時期です。
- 2月:漁が解禁される時期
- 3月:最も水揚げが多くなる時期
- 4月:漁の終盤、旬の名残
日本におけるイカナゴの名称
イカナゴには多くの地方名があり、地域によって異なる呼び方をされます。
稚魚の名称
- 東日本:コウナゴ、コオナゴ(小女子)
- 西日本:シンコ(新子)
成長した個体の名称
- 北海道:オオナゴ(大女子)
- 東北地方:メロウド(女郎人)
- 西日本:フルセ(古背)、カマスゴ(加末須古)、カナギ(金釘)
イカナゴの調理方法
くぎ煮(釘煮)
イカナゴの幼魚を醤油やざらめ糖、千切り生姜などで煮詰めた郷土料理「くぎ煮」は、阪神地区や播磨地区で春先によく作られます。その姿が錆びた釘に似ていることから、「くぎ煮」と名付けられました。
くぎ煮の作り方
- 水揚げされたイカナゴを鍋に入れる。
- 醤油、ざらめ糖、千切り生姜を加えて煮込む。
- 煮汁が減った段階で味醂を加え、焦がさないように煮詰める。
- かき混ぜずに煮込むことで、身が崩れず仕上がる。
炊き上がったイカナゴは茶色く曲がり、まるで錆びた釘のように見えます。なお、「くぎ煮」は神戸市長田区の珍味メーカー・株式会社伍魚福(ごぎょふく)の登録商標です。
くぎ煮の風物詩
毎年3月末頃になると、阪神地区や播磨地区の食料品店にはくぎ煮が山積みされます。また、土産物としても人気があり、ショウガ味以外にもサンショウ味やトウガラシ味のものが販売されています。
常温で日持ちするため、親類や知人への贈り物として郵送されることも多く、郵便局では年間100万件近くのくぎ煮が送付されています。この需要を受け、明石市の一部の郵便局では、レターパックに収まる専用のプラスチック容器を販売しています。
くぎ煮発祥の地
神戸市垂水区は「イカナゴのくぎ煮発祥の地」とされており、垂水区塩屋町にはそれを示す石碑が建てられています。しかし、異説もあり、2013年には神戸市長田区駒ケ林の駒林神社の大鳥居前にも「いかなごのくぎ煮発祥の地」の石碑が建立されました。
ちりめん
体長2cmほどのイカナゴの幼魚は、水揚げ後すぐに釜揚げされます。これを新子(しんこ)ちりめんと呼びます。さらに、釜茹での後に乾燥させたものはカナギ(小女子)ちりめんと呼ばれます。
カマスゴ
体長4~5cmほどに成長したイカナゴはカマスゴと呼ばれ、釜茹でした後に酢醤油やからし酢味噌で食べられます。食べる前に一度炙ることで香ばしさが増し、より美味しくなると言われています。
まとめ
兵庫県産のイカナゴは、その鮮度の良さと多彩な調理法で、地元の人々に愛され続けています。春を告げる魚として、くぎ煮やちりめん、カマスゴなど様々な形で食卓を彩ります。特に、イカナゴのくぎ煮は地域の文化とも深く結びついており、贈り物としても人気のある逸品です。兵庫県を訪れた際は、ぜひ新鮮なイカナゴ料理を堪能してみてください。