妙見山は、兵庫県と大阪府にまたがり、北摂山系に属する標高約600メートルの山です。この山は古くから信仰の対象とされており、山頂近くには日蓮宗の関西地区における重要な寺院、能勢妙見堂が鎮座しています。
妙見山は大阪府豊能郡と兵庫県川西市の境に位置し、その霊場としての歴史から現在まで多くの人々に親しまれてきました。登山やハイキングに訪れる人も多く、山中に整備された複数のルートが季節を通して豊かな自然と共に楽しめる山として知られています。
妙見山の山体そのものが信仰の対象とされ、山頂近くにある能勢妙見堂は「無漏山真如寺境外仏堂能勢妙見山」として日蓮宗の関西における重要な霊場とされています。本寺の真如寺は能勢町地黄にありますが、飛び地境内である妙見堂には、真如寺を上回る数の参拝者が訪れています。
妙見山は西南日本で標高600メートル付近にブナが自生する南限とされ、大阪府側には多くのブナが自生しています。しかし、近年では兵庫県川西市側でもブナの群生が発見され、2013年には兵庫県のレッドリストにも追加されました。山頂付近には9.5ヘクタールにわたるブナ林が広がり、この地域の貴重な自然景観として保護されています。大阪府内のブナ自生地は妙見山と和泉葛城山のみであり、いずれも天然記念物に指定されています。
妙見山の山頂には、かつて行基によって建立されたと伝わる「為楽山大空寺」がありました。鎌倉時代に入ると、源満仲を祖とする能勢氏がこの地の領主となり、山頂に妙見菩薩が祀られたとされています。江戸時代初期には、領主の能勢頼次の帰依を受けた日乾(後の日蓮宗総本山である身延山久遠寺二十一世)の手により、新たな妙見菩薩像が彫られ、これが現在の能勢妙見堂として祀られることになりました。
妙見山頂のブナ林は、1万年以上前から続く自然林とされています。このことから、妙見山の信仰は行基による大空寺建立以前から続いていたと考えられています。ブナ林は、現代でも豊かな生態系を保っており、多くの人々が四季折々の景観を楽しみに訪れる名所となっています。
妙見山の北側中腹には、能勢の本滝があり、江戸時代から滝行を行う者が増加しました。江戸時代中期に刊行された『摂津名所図会』には、この滝が「妙見滝」として記され、能勢妙見堂を訪れる参詣者たちが滝行を行っていたことが分かります。当時、滝のそばには「常富堂」という建物が存在していました。1834年に編纂された『能勢東郷志』にも、妙見山の滝で行が行われていたことが記されており、この場所がかつての修行場であったことを物語っています。
しかし、妙見山は旗本である能勢氏の知行地であったため、明治時代の廃藩置県や版籍奉還の影響を受けました。その後、天台宗系修験道の僧侶である野間日照が妙見滝の地を取得し、居を構えました。1935年には、野間日照によって常富堂が改築され、現在の妙見宗総本山である本瀧寺が建立されました。現在、能勢の本滝までの山道には、多くの石仏が祀られており、これは滝が行場であった時代の名残を伝えています。
妙見山には他にも、東側中腹に「清滝」、南西側中腹に「新滝(雄滝)」と呼ばれる滝があります。清滝の近くには妙瀧寺があり、新滝の側には白瀧神社が鎮座しています。これらの滝もまた、妙見山の歴史と信仰の一部を成しています。
妙見山へのアクセス方法は多岐にわたります。以下に主なルートを紹介します。
阪急宝塚線「池田駅」から阪急バス東能勢線に乗り換え、「妙見口」停留所で下車後、徒歩4kmで到達します。このバス路線は「中止々呂美」停留所にて、北大阪急行線「千里中央駅」からのバスに乗り継ぐことも可能です。
JR山陰線「亀岡駅」から京阪京都交通・亀岡市ふるさとバスを利用し、「神地」停留所で下車後、徒歩約5.4kmで妙見山に到着します。
能勢電鉄妙見線「妙見口駅」から、徒歩約3.6kmで山頂に到達することが可能です。また、ハイキングコースが整備されており、「大堂越コース」「新滝道コース」「上杉尾根コース」「初谷渓谷コース」「天台山コース」の5つのルートが推奨されています。
妙見山は複数のハイキングコースが整備されており、初心者から上級者まで楽しめるルートが用意されています。以下のコースがあり、それぞれのコースで異なる景色が楽しめます。
以前は「妙見ケーブル」や「妙見の森リフト」が運行されていましたが、2023年12月3日をもって廃止されました。これに伴い、現在は公共交通機関やハイキングコースを利用してのアクセスがメインとなっています。
妙見山では四季折々の自然を楽しむことができます。春には桜や新緑、秋には紅葉が美しく、また冬には山全体が静寂に包まれ、清々しい空気が漂います。歴史的な霊場としての雰囲気と共に、自然の美しさも満喫できる観光スポットです。
能勢妙見堂への参拝はもちろんのこと、山中を歩きながらブナ林や滝を楽しむのも妙見山ならではの楽しみです。登山やハイキングの途中で自然と向き合い、心を癒す時間を持つことができます。
妙見山は、大阪府と兵庫県にまたがり、自然の豊かさと長い歴史を併せ持つ山です。霊場としての重要性だけでなく、自然遺産としての価値も高く、観光地としても多くの人々に親しまれています。妙見山へのアクセスは様々な手段があり、歴史や自然、信仰の調和を楽しむハイキングや観光スポットとして魅力にあふれています。妙見山を訪れることで、四季折々の美しさや歴史の深さ、信仰の心に触れることができるでしょう。