地理と特徴
芦屋川は、花崗岩質の六甲山麓から一気に下る急流で、その水質の良さから、明治時代から水道水源として利用されています。しかしながら、急流であるがゆえに土砂の生産量が多く、中流部では天井川が形成されるなど、水害のリスクが常に存在していました。
1935年(昭和10年)には、毎月のように集中豪雨が発生し、上流部で土砂災害が頻発。これにより、河床が上昇し、容易に氾濫が発生する危険な状態に陥っていました。その後、1938年(昭和13年)の阪神大水害では、河床の堆積物が土石流化し、芦屋川周辺の住宅地に大きな被害をもたらしました。このような背景から、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災でも、上流部で土砂災害が発生し、その後の対策工事が迅速に行われました。
芦屋川の支流と流域
芦屋川の支流には、高座川(こうざがわ)があり、芦屋市北部の六甲山地に発します。ごろごろ岳(標高565.6m)から奥山貯水池を経て合流し、石仏谷や八幡谷などの沢を集めながら南流します。芦屋市の高級住宅街を通過する際には、重要文化財である旧山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)をはじめ、多くの邸宅が川沿いに並んでいます。
中流部からは天井川となり、山手幹線や東海道本線は河床の下をトンネルで抜けており、阪急芦屋川駅や阪神芦屋駅のホームは芦屋川をまたいで設置されています。その後、芦屋川は南流し、大阪湾(東神戸港)へと注ぎます。
芦屋川は扇状地の地形を持つため、上流部での降雨が少ない時期には下流部が渇水状態になることがあり、特に国道43号以南では深刻です。橋のある鵺塚(ぬえづか)橋付近では、この現象が顕著に見られます。
芦屋川の歴史
主要な歴史的出来事
芦屋川は、幾度となく自然災害に見舞われてきました。1934年(昭和9年)の室戸台風では、堤防沿いの松並木の多くが倒壊しました。翌年の1935年(昭和10年)には、集中豪雨による溢水や氾濫が頻発し、7月5日には上流部で山腹崩壊が発生しました。これにより、下流域では阪急芦屋川停留所付近で木橋が流され、破堤が発生しました。その後も、8月10日および8月29日には再び氾濫が発生し、家屋が浸水するなどの被害が続きました。
さらに、1938年(昭和13年)7月3日から5日にかけて発生した阪神大水害では、芦屋川が再び氾濫し、甚大な被害をもたらしました。そして1995年(平成7年)1月17日の阪神・淡路大震災でも、上流部で土砂災害が発生し、対策工事が急ピッチで進められました。
芦屋川の景観と観光地
流域の風景
芦屋川は、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。春には桜が咲き誇り、川沿いの散歩道は市民や観光客に人気のスポットとなっています。また、夏には緑豊かな木々が涼しげな木陰を提供し、秋には紅葉が川面を彩ります。
流域の観光地
芦屋川の流域には、多くの観光地が点在しています。芦屋ゴルフ場や芦屋ロックガーデン、俵美術館、旧山邑家住宅、滴翠美術館など、文化と自然が融合したエリアとなっています。また、上流部の沢登りは上級者向けであり、ハイキングコースではないため、注意が必要です。
橋梁
芦屋川には多くの橋梁が架かっており、その中でも開森橋、桜橋(人道橋)、芦屋川橋(阪急神戸本線)、月若橋(山手幹線)、大正橋(JR東海道本線)、業平橋(国道2号)、公光橋、芦屋川橋(阪神本線)、芦屋川橋(国道43号)、鵺塚橋などが有名です。これらの橋からは、芦屋川の美しい景色を眺めることができます。
斜行リフト
芦屋市松ノ内町には、天井川である芦屋川の川床の下をくぐる斜行リフトが設置されています。このリフトは、独特な景観を持ち、観光名所の一つとなっています。