市立伊丹ミュージアムとの統合
2022年(令和4年)4月、柿衞文庫は、伊丹市立美術館、伊丹市立工芸センター、伊丹市立伊丹郷町館、伊丹市立博物館と統合され、「市立伊丹ミュージアム」を構成する一部となりました。これにより、柿衞文庫は市立伊丹ミュージアム内の施設として位置づけられ、さらに多くの来館者にその魅力を伝える役割を担っています。
統合後、市立伊丹ミュージアムは指定管理施設となり、現在の指定管理者は伊丹ミュージアム運営共同事業体(代表構成員:公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、その他構成員:公益財団法人柿衞文庫)です。指定期間は2022年4月1日から2025年3月31日までとなっています。
柿衞文庫の成り立ちとコレクション
柿衞文庫の設立にあたっては、家業である酒造業を営みながら、国文学者としても活躍した元伊丹市長・岡田利兵衞氏の多大な貢献がありました。「柿衞」という俳号を持つ岡田氏から寄贈された貴重な品々が、現在の文庫の礎となっています。
三大俳諧コレクションの一つとしての評価
柿衞文庫は、東京大学総合図書館の「洒竹・竹冷文庫」や、天理大学附属天理図書館の「綿屋文庫」と並び、三大俳諧コレクションの一つとして高く評価されています。江戸時代の俳聖・松尾芭蕉や、伊丹ゆかりの上島鬼貫、小林一茶から、近代の正岡子規、河東碧梧桐、さらに現代俳句に至るまで、多岐にわたる資料を所蔵しています。
文庫の所蔵品は、軸や短冊といった俳句資料約7500点、書籍約3500点にのぼり、その豊富なコレクションは俳句文化の歴史を紐解く上で極めて重要な役割を果たしています。
「也雲軒」を偲ぶ俳句塾の開催
柿衞文庫では、かつて伊丹にあった「也雲軒」を偲び、俳句塾を定期的に開催しています。この俳句塾では、伝統的な俳句の精神を尊重しながらも、現代の感覚に即した俳句を創作することが奨励されています。
主な所蔵品
柿衞文庫のコレクションには、以下のような著名な作品が含まれています。
- 松尾芭蕉筆 「古池や蛙飛び込む水の音」句短冊 - 江戸時代を代表する俳聖、松尾芭蕉の代表作の一つ。
- 上島鬼貫筆 「にょっぽりと」句一行物 - 伊丹出身の俳人、上島鬼貫による作品。
- 与謝蕪村筆 「俳仙群会図」 - 俳句と絵画を融合させた与謝蕪村の作品。
- 小林一茶筆 「賀六十」自画賛 - 小林一茶が自身の60歳を祝った自画賛。
- 田能村竹田筆 「柿記」 - 南画家である田能村竹田による絵画作品。
- 高浜虚子賛 下村為山画 「へちま図」 - 俳句の大御所、高浜虚子の賛を持つ作品。
- 高橋草坪筆 「台柿図」 - 俳句と絵画を融合させた作品。
利用案内
所在地
柿衞文庫の所在地は以下の通りです。
〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前2丁目5番20号
交通アクセス
柿衞文庫へは、以下の交通手段が利用できます。
- 阪急伊丹線 伊丹駅 徒歩8分
- 西日本旅客鉄道(JR宝塚線) 伊丹駅 徒歩8分
周辺情報
柿衞文庫の周辺には、以下のような歴史的建造物や文化施設があります。
- 旧岡田家住宅
- 旧石橋家住宅
- ブルワリーミュージアム
- 伊丹市立文化会館(いたみホール)
- 伊丹アイフォニックホール
- 猪名野神社
- 旧大坂道(都市景観形成道)
関連項目
柿衞文庫では、2010年に俳人桂信子を顕彰する「桂信子賞」が設立されました。この賞は、俳句界における優れた作品や人物を表彰するものであり、柿衞文庫の文化的貢献を象徴するものとなっています。
柿衞文庫は、俳句の歴史と文化を後世に伝える重要な施設であり、伊丹市の文化財として大切に保護されています。俳句や日本文化に興味を持つ方々にとって、訪れる価値のある場所です。