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永谷山 円通寺

(ようこくざん えんつうじ)

丹波紅葉三山に数えられる、歴史と自然が息づく名刹

円通寺は、兵庫県丹波市氷上町にある曹洞宗の寺院です。山号を「永谷山(ようこくざん)」、正式な寺号を「円通興国禅寺」といい、本尊には如意輪観音を祀っています。高源寺、石龕寺とともに「丹波紅葉三山」の一つに数えられ、秋には境内を彩る紅葉が訪れる人々を魅了します。

室町時代に創建された円通寺は、朝廷や幕府とも関わりを持ち、長い歴史のなかで地域の信仰と文化を支えてきました。戦国時代の危機や江戸時代の再興、明治時代の荒廃と復興を経て、現在も数多くの文化財や歴史的建造物を伝えています。静かな境内を巡りながら、丹波の歴史と禅寺ならではの落ち着いた雰囲気を味わえる寺院です。

円通寺の歴史

足利義満による創建

円通寺の歴史は、永徳2年(1382年)正月にさかのぼります。寺伝によると、室町幕府第3代将軍の足利義満が後円融天皇の勅命を受けて開基となり、足利尊氏の第四子とされる英仲芳俊を開山として創建されました。

山号の「永谷山」は創建時の年号に使われた「永」の字にちなみ、寺号の「円通寺」は天皇の宝号に由来すると伝えられています。その後、円通寺は勅願寺となり、朝廷の祈願を担う寺院として重要な役割を果たしました。

本尊・如意輪観音の由来

円通寺の本尊である如意輪観音像には、後小松天皇が南北朝の合一を祈願し、一刀三礼の作法で自ら彫り上げたものを寺に下賜したという伝承が残されています。

また、第2世には関白・近衛道嗣の第三子である牧翁性欽が迎えられました。こうした由緒からも、円通寺が朝廷と幕府の双方にゆかりを持つ、格式ある寺院であったことがうかがえます。

戦国時代の危機と寺院の存続

戦国時代に入ると、円通寺は一時衰退しました。織田信長の命を受けた明智光秀が丹波国へ侵攻した際には、寺も戦火に巻き込まれる危機に直面します。

寺伝によると、地元の国人であった荻野喜右衛門が光秀の本陣を訪れ、円通寺への攻撃を取りやめるよう懸命に説得しました。その結果、光秀は要求を受け入れ、寺は戦火を免れたと伝えられています。地域の人々の尽力によって守られたこの逸話は、円通寺の歴史を語るうえで欠かせないものです。

江戸時代の再興と明治時代の復興

江戸時代になると、円通寺は再興され、江戸幕府から朱印状を与えられました。また、触頭として宗派内の寺院を取りまとめる役割も担い、丹波国をはじめ、但馬国、播磨国、摂津国にまで広がる影響力を持つようになりました。当時は200を超える末寺と、1,000石を超える寺領を有していたと伝えられています。

しかし、天保11年(1840年)に本堂や庫裏が焼失し、その後再建されたものの、明治時代には廃仏毀釈の影響によって荒廃しました。寺の復興に尽力したのが、第40世住持の日置黙仙禅師です。日置黙仙禅師は後に曹洞宗大本山永平寺の管長も務め、円通寺の再興に大きな足跡を残しました。

円通寺の境内と見どころ

施無畏殿(本堂)

施無畏殿は、天保11年(1840年)の火災後に再建された本堂です。軒下には、中井権次一統による精巧な彫刻が数多く施され、建物を彩っています。木造建築としては当地域最大規模を誇り、円通寺の歴史と建築文化を伝える見どころの一つです。

庫裏

庫裏も本堂と同じく、天保11年(1840年)の火災後に再建されました。当地域でも最大級の規模を持つ建物で、寺院を支える重要な施設として、堂々とした佇まいを見せています。

躍然遠挙の碑

境内には、幕末から明治にかけて活躍した山岡鉄舟が筆を執った「躍然遠挙」の碑があります。歴史上の人物と円通寺とのつながりを感じられる史跡です。

三如来堂

三如来堂は、もともと大師堂として使用されていた建物です。香良にあった三如来寺が廃寺となった際、そこに祀られていた釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来の三如来像が移され、現在も大切に安置されています。

明治忠魂碑

明治忠魂碑には、山縣有朋が揮毫した碑銘が刻まれています。境内に残る歴史的な石碑の一つで、近代日本の歴史を伝えています。

鐘楼と放生池

鐘楼は、境内の静かな景観に溶け込むように建ち、寺院らしい落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

放生池のある場所には、かつて源融が建立したとされる賀茂大明神社がありました。円通寺の建立に際して、賀茂神社と神野神社に分けて祀られるようになったと伝えられています。寺院の歴史だけでなく、地域の神社の由緒にも関わる場所です。

山門(仁王門)

円通寺の山門は、門の左右に別棟を設け、それぞれに仁王像を安置していることから「仁王門」とも呼ばれています。境内へと続く入口として、訪れる人を静かに迎えます。

指月庵・永代供養塔・清水地蔵

境内の一角には、静かに佇む指月庵があります。また、永代供養塔は平成29年(2017年)5月に完成しました。清水地蔵を祀る小さな祠もあり、境内を巡るなかで、円通寺に受け継がれてきた祈りと信仰に触れることができます。

円通寺の文化財

丹波市指定有形文化財

円通寺には、仏教美術や禅宗文化を伝える貴重な文化財が残されています。丹波市指定有形文化財には、絹本著色釈迦十六善神像1幅、絹本墨画地蔵瀧山水図3幅、絹本墨画龍図1幅のほか、『正法眼蔵』の写本24冊などがあります。

仏画や水墨画、仏教思想を伝える書物は、円通寺が長い年月にわたって信仰と学問の場として歩んできたことを物語っています。

丹波市指定天然記念物

境内には、大スギ、タブノキ、イトザクラなど、丹波市指定天然記念物となっている樹木もあります。歴史ある堂宇や石碑とともに、境内の自然も円通寺の魅力です。季節ごとに表情を変える木々を眺めながら散策すれば、古刹ならではの穏やかな時間を過ごせます。

丹波紅葉三山の名刹を訪ねて

円通寺は、足利義満の時代に創建された由緒ある寺院であり、朝廷や幕府との関わり、戦国時代の逸話、江戸時代の再興など、幾重にも重なる歴史を今に伝えています。施無畏殿や仁王門をはじめとする建造物、仏画や書物などの文化財、そして境内に息づく古木も見どころです。

高源寺、石龕寺と並ぶ「丹波紅葉三山」の一つとして、紅葉の季節には特に趣深い景観が楽しめます。歴史や仏教文化に親しみながら、丹波の自然と静けさを味わえる円通寺を、丹波観光の際に訪れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
永谷山 円通寺
(ようこくざん えんつうじ)

丹波篠山

兵庫県