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丹波の黒豆

(たんば くろまめ)

全国に名をはせる丹波篠山の名物

丹波篠山地方は、粘土質の土壌と昼夜の寒暖差が大きい気候を生かし、古くから良質の黒大豆を栽培してきました。特に「丹波黒(たんばぐろ)」と呼ばれる黒豆は、粒の大きさと光沢が特徴的で、煮ても皮が破れにくく、美しい姿を保ちます。そのため、「丹波の黒豆」として全国的に知られています。

丹波黒の特徴

丹波黒は一般の大豆と比べ、以下のような優れた特徴を持っています。

驚くべき大きさ

大豆の大きさは「百粒重(ひゃくりゅうじゅう)」という単位で比較されますが、一般の大豆が約30gであるのに対し、丹波黒は80g〜90gと3倍もの大きさを誇ります。

煮ても破れにくい美しい黒豆

煮ても皮が破れにくく、ツヤが増し、ふっくらと膨らむのが特徴です。見た目が美しいだけでなく、もちもちとした食感と芳醇な香りを楽しむことができます。

栄養価の高さ

丹波黒には、たんぱく質や脂肪、ビタミンB1・B2が豊富に含まれており、「畑の肉」とも称されるほど栄養価の高い食品です。また、皮にはアントシアニン系の色素が含まれ、血液をサラサラにする効果が期待されています。

歴史と由来

黒豆栽培の始まり

丹波黒の歴史は、江戸時代まで遡ります。『日乗上人日記』には1716年(正徳6年)には丹波篠山地域で黒大豆の栽培が行われていたと推測できる記述があり、1730年(享保15年)に刊行された料理本『料理網目調味抄』にも丹波篠山の黒豆に関する記述が残されています。

将軍への献上品

江戸時代には、篠山藩主が将軍へ黒大豆を献上し、その品質の高さを大いに賞賛されたと伝えられています。また、黒豆が年貢として納められていた記録も残っています。

品種改良と全国ブランド化

品種改良の進展

1941年(昭和16年)、兵庫県農事試験場による品種比較試験の結果、「丹波黒」が最も優良な黒豆と認定されました。その後、系統選抜によって優良3系統が選出され、品質向上のための品種改良が進められています。

全国的な広がり

1960年代以降、丹波篠山地域では農業生産基盤が整備され、大豆の生産量が増加しました。さらに、丹波黒は全国でのブランド化が進み、2021年(令和3年)には日本農業遺産にも認定されています。

丹波黒の利用方法

黒豆煮(くろまめに)

丹波黒を甘く煮た「黒豆煮」は、古くからおせち料理の定番として親しまれてきました。甘さとコクのある味わいが特徴で、食卓を彩る縁起の良い一品です。

枝豆としての楽しみ方

10月には、成熟途中の丹波黒を「黒枝豆」として楽しむことができます。豊かなボリューム感と深いコク、独特の風味があり、短い期間しか味わえないことから「幻の枝豆」とも呼ばれています。

お菓子や料理への応用

近年では、丹波黒を使用した洋菓子や和菓子も増えており、ケーキやクッキー、甘納豆など、さまざまなスイーツに活用されています。また、黒豆ご飯や黒豆茶としても人気があります。

生産方法とこだわり

手作業による収穫

一般的な黒豆は機械で収穫されますが、丹波黒は栽培から収穫、天日干しに至るまですべて手作業で行われます。これにより、品質を保ち、風味豊かな黒豆が生産されています。そのため、丹波黒は「苦労豆」とも呼ばれることがあります。

長期間の栽培で育まれる味

通常の黒豆は約70日間で成熟しますが、丹波黒は約1.5倍の時間をかけてじっくりと育てられます。そのため、長期間にわたって栄養が蓄積され、濃厚な味わいと大粒の豆が生まれるのです。

栄養価と健康効果

ポリフェノールの豊富さ

丹波黒には、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれており、抗酸化作用が期待されます。これにより、老化防止や生活習慣病の予防に役立つとされています。

ビタミンEの高含有

一般的な大豆と比べ、丹波黒はビタミンEの含有量が多く、免疫力向上や血行促進に効果があると考えられています。

まとめ

丹波黒は、その大きさや美しい色ツヤ、豊かな風味から「黒豆の王様」とも称される逸品です。おせち料理の定番である黒豆煮をはじめ、枝豆やスイーツ、黒豆ご飯など、多彩な食べ方で一年中楽しめます。

また、手作業で丁寧に育てられた丹波黒は、希少価値が高く、全国的に高い評価を受けています。丹波篠山の伝統と農家のこだわりが生み出したこの特別な黒豆を、ぜひ味わってみてください。

Information

名称
丹波の黒豆
(たんば くろまめ)

丹波篠山

兵庫県