朝倉山椒の特徴
爽やかな香りとピリッとした辛み
朝倉山椒は、その柑橘系の爽やかな香りとさっぱりとした辛みが特徴です。通常の山椒よりも渋みが少なく、口当たりがよいため、さまざまな料理に使われています。特に、他の品種と比べてリモネンやフェランドレンといった香気成分の割合が高く、フルーティーな香りを楽しむことができます。
トゲのない木と大粒の実
一般的な山椒の木には鋭いトゲがあることが多いですが、朝倉山椒の木にはトゲがなく、収穫がしやすいという利点があります。また、実が大きく、鮮やかな緑色をしているのも特徴のひとつです。このため、加工にも適しており、養父市ではさまざまな商品が作られています。
朝倉山椒の歴史と由来
豊臣秀吉や徳川家康も愛した名品
朝倉山椒の発祥地は兵庫県養父市八鹿町朝倉で、その地名に由来して名付けられました。歴史を遡ると、豊臣秀吉が山椒を白湯に入れて飲み、「風流」だと感銘を受けたとされる記録が残っています。また、生野奉行の間宮直元が徳川家康に献上したとも伝えられており、大名たちにとって特別な贈り物として重宝されていました。
江戸時代から続く献上品
江戸時代には幕府への献上品として扱われ、庶民が手に入れるのは難しい高級品でした。しかし、現在では但馬地方に広まり、400年以上の歴史を持つ特産品として、養父市の誇りとなっています。
朝倉山椒の代表的な食べ方
ご飯のお供に最適な「朝倉山椒の佃煮」
朝倉山椒を使った料理の中でも特に人気があるのが佃煮です。佃煮を作る際のポイントは、以下の手順を守ることです。
- 醤油、酒、みりんなどの調味料を先に沸騰させる。
- その後で朝倉山椒を加えてもう一度沸騰させる。
- 香りが消えないようにごく弱火で汁気がなくなるまでじっくり煮る。
炊きたてのご飯にのせたり、冷や奴の薬味として楽しむのもおすすめです。
朝倉山椒と有馬山椒の違い
有馬山椒とは?
有馬山椒は、有馬地方に自生する山椒で、朝倉山椒とはいくつかの違いがあります。
- 枝に鋭いトゲがある(朝倉山椒にはトゲがない)
- 柑橘系の香りが豊かで、辛みが強い
- 「有馬」と名のつく日本料理には、有馬山椒が使われることが多い
しかし、現在では朝倉山椒の流通量が圧倒的に多く、多くの料理に用いられています。
有馬山椒の希少性
昭和40年代半ばまでは、有馬地方では天然の有馬山椒を使った食文化が根付いていました。しかし、有馬山椒の木の所在地を知る人々が外部に情報を明かさなかったため、広く普及することがなく、絶滅の危機に瀕しています。そこで、平成21年から復活プロジェクトが始まり、平成25年には農家での生産が再開されました。
朝倉山椒の収穫時期と利用方法
収穫の最盛期
朝倉山椒の収穫の最盛期は5月中旬から下旬です。この時期には多くの家庭で朝倉山椒を使った料理が作られます。一方、有馬山椒は年間3回の収穫時期があり、以下のように異なります。
- 5月上旬:花の収穫
- 6月:実の収穫
- 7月~8月:熟した実を採取し粉山椒の原料とする
朝倉山椒の活用方法
朝倉山椒は、佃煮のほかにもさまざまな料理に利用されています。代表的な食べ方には以下のようなものがあります。
- 醤油、酒、みりんと煮て佃煮にする
- 炊きたてのご飯にのせる
- 冷や奴の薬味として使用する
- 魚の煮付けや肉料理のアクセントに
朝倉山椒の未来
地域ブランドとしての発展
養父市では、「朝倉さんしょ」という地域ブランドを確立し、品質向上に努めています。その結果、平成29年には、内閣府や農林水産省が後援する「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の「自治体が勧めるまちの逸品部門」において最優秀賞に選ばれました。
今後も、朝倉山椒の伝統を守りながら、新たな商品開発や国内外への発信を通じて、その魅力がさらに広まることが期待されています。